テクニカルノート

SSDによるRAID0の性能評価 (2010/5/13)

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データを多数のブロックに分割し、複数のハードディスクにサイクリックに振り分けて格納し、高速のディスクシステム(RAID0)を実現する手法があります。下図のように4台のハードディスクで構成されたRAID0の場合、HDD1~4にデータブロック1~4、5~8、9~12が分散保存されます。ハードディスクへのリードまたはライトは4台に同時に行なわれますので、実際にはホスト・バスの速度、RAIDコントローラの性能によって限界があるものの、ハードディスクの台数に比例したアクセス速度を期待できます。反面、RAID0には冗長性がありませんので、ハードディスクのどれかが故障するとデータは復元できないという欠点もあります。

RAID0

計算過程で生成される中間データをファイルとしてディスクに一時保存するアプリケーションは多くあります。このファイル(スクラッチ)は往々にして大量であり、頻繁にアクセスされることが多いものですが、これを高速なRAID0に保存するとアプリケーションの実行時間短縮に有効です。Gaussian、Wien2Kのようなスクラッチを多用するアプリでは特に効果を発揮しています。ハードディスク障害によるデータ消失のリスクは台数に比例して高まりますが、その時の計算をやり直すだけで済みますので、被害は軽微です。

ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)

ソリッド・ステート・ドライブ(SSD)

昨今のフラッシュメモリの大容量化、低価格化により、それによって構成されたソリッド・ステート・ドライブ(SSD)がリーゾナブルな価格で購入できるようになりました。コンピュータとのインターフェイスはHDDと共通(300MB/sec)であるものの、HDDのようなヘッドの移動によるデータの途絶時間が生じないため、高速なデータ転送が得られます。弊社ではSSDとHDDによって構成されたRAID0の性能を調査し、高速化の可能性を探ってみました。下記がその結果です。

HDD単体の時のリード、ライト速度の平均は79.5MB/secであるのに対し、SSD単体では194MB/secと2.4倍も高速です。RAID0として妥当なサイズと思われる4台でRAID0を構成した場合、HDDでは265MB/sec(HDD1台比3.3倍)、SSDでは727.5MB/sec(同9倍)にもなりました。アプリケーションの実行速度がスクラッチあるいはスワップへのアクセスによって律速されている場合、SSDによるRAID0は有効なブレークスルーを提供できます。

(リード)
1個 4個 RAID0 6個 RAID0 8個 RAID0
1000GB HDD
Adaptec 16port RAID Card
(PCI Express V1 x8)
81 MB/s 305 MB/s   590 MB/s
128GB SSD
Adaptec 8port RAID Card
(PCI Express V1 x8)
187 MB/s 840 MB/s 1,020 MB/s 1,010 MB/s
128GB SSD
LSI 8port RAID Card
(PCI Express V2 x8)
215 MB/s 870 MB/s 1,310 MB/s 1,370 MB/s
(ライト)
1個 4個 RAID0 6個 RAID0 8個 RAID0
1000GB HDD
Adaptec 16port RAID Card
(PCI Express V1 x8)
78 MB/s 225 MB/s   352 MB/s
128GB SSD
Adaptec 8port RAID Card
(PCI Express V1 x8)
149 MB/s 555 MB/s 645 MB/s 640 MB/s
128GB SSD
LSI 8port RAID Card
(PCI Express V2 x8)
173 MB/s 605 MB/s 790 MB/s 820 MB/s
ブロックサイズ10MBのREADまたはWRITEを2秒間行ない、それを100回繰り返した時の平均値 (各回の先頭ブロックは移動させた)
PCI Express Ver1 8x の転送能力:2GB/sec
PCI Express Ver2 8x の転送能力:4GB/sec
SATA2 HDDの転送能力:300MB/sec